未来の扉

辻加護卒業の第一報を聞いたときは暗澹たる気分に陥りました。
その想いは1月25日のハロコンののさんが昏倒するシーンを目撃することでピークを迎えたのですが、その絶望にも似た感情も「ブレーメンの音楽隊」を観続けるうちに、娘。と辻・加護の未来に一筋の希望を感じるようになりました。ドラマの最終回を観終えた今は、むしろ辻・加護で作る新ユニット「W」の活動が楽しみなぐらいです。


今、この時期にミニモニ。メンバーに「ブレーメンの音楽隊」という仕事を与えられた意味は大きいと思うのです。


やはりね。世間的にはモーニング娘。て可愛いだけの女の子=実力が伴わない、というイメージは根強いと思うのです。我々ヲタのようにライブやイベントに足繁く通ったりしないフツーの人にとって、TVで観るモーニング娘。が唯一の評価の基準なわけですから。

実際、これまでTVに映る娘。たちは、バラエティ番組に出演しても気の利いたトークができなかったり、数少ないドラマは予算も時間も極端に少ない中で作られたと思しきものばかりで深味に欠けていました。

頼みの綱である楽曲も、音楽なんか車ん中のBGMかカラオケのネタでしかないフツーの人には中々届きません。


極論言えば、ヲタはTVに娘。が映っていれば大概のことは許してしまいます。出来が良ければ殊更に賞賛し不出来なモノには目をつぶったり。あと、微に入り細にわたって観てしまうのもヲタの習性。画面の端で繰り広げられるメンバー同士の些細なやり取り一つでいくらでも妄想できてしまう。

けど、フツーの人たちはそんなにヒマではないのでTVなんて漠然と流し観してる。仮に何かに笑ったりしても半日後にはそんなこと忘れてしまって二度と思い出すことはない。フツーの人とヲタは、そもそもTVを観る姿勢から違っているのです。


俺自身、ヲタになって3年が経ちすでに客観的にハロプロを評価するなんてできなくなっている。ただ、娘。たちの歌・ダンス・演技などの実力は世間が思うよりも高いと信じています。

結局、娘。の実像はヲタの過大評価と世間の過小評価の中間あたりなのかもしれません。結論としてはつまらないけどね。


で、「ミニモニ。でブレーメンの音楽隊」。
このドラマはミニモニ。の4人だからこそ成立したのは確かなんだけど、ミニモニ。だけでなく企画・脚本・演出・キャスト等々、色々な歯車が奇跡的に噛み合って珠玉のドラマになったのだと思います。


ブレーメン」の信じられないほどの丁寧さは、やはりNHK製作の子ども向けならではなんでしょうね。俺はドラマとか観ないのであまり偉そうなことは書けないけど、フツーの人に向けて作られたドラマよりも子ども向け(≒マニア向け)の方がディテールを読み込む面白さに満ちているんじゃないかと思ってます。(時間を溯る構成とか張り巡らされた伏線の数々とかの面白さは、悲しいかな子どもかマニアにしか届かない。)

加えて、かつて「少年ドラマシリーズ」にハマった人がスタッフの中にいるみたいで、作っている人たちの核の部分に少年少女モノ=ジュブナイルが好きでホンキで良いモノを作ろうという意思が感じられます。
さらに、主役の高橋・辻・加護についてかなり深く研究し理解したうえでドラマの中に見事に落とし込んでいる。3人ともドラマで主役を張るのは初めてにも関わらず伸び伸びとしてたので、きっと撮影現場の雰囲気も凄く良かったのでしょう。脇を固める役者さんも皆、素晴らしかった。

正直、ハロプロのドラマ関係でこれ以上のモノが今後出来得るとは思えないぐらい、物凄く恵まれたドラマですよ。


高橋・ののさん加護ちゃんの演技、というかドラマで見せたキャラクターは等身大の魅力に溢れていました。

高橋の溌溂とした演技はヲタの目にも非常に新鮮に映りました。正直、高橋があんな自然に演技できるとは思ってなかったです。びっくりびっくり!

ののさんについては兎に角スゴイとしか言いようがありません。ののさんという常識外れに巨大な原石は、ほんの少し磨いただけで物凄い輝きを放ったのですから!彼女の伸びシロを思うとホント将来が楽しみです。

そして加護ちゃん。悲しみを胸に秘めているからこその明るさと優しさ。そんな難しい役を演じることのできる10代の女優さんは、現在、加護ちゃん以外にいないですよ。多分。


流し観している人でもこれなら目が止まるでしょうし、幾許か心を動かす、つまり感動させることができたと思います。

NHK教育という場はメジャーな舞台ではないかもしれません。が、テレビ東京以外の場所で演じることが今まで娘。に興味を持っていなかった人の目に触れるかもしれないし、それが新しい仕事に繋がるキッカケになると良いな、と思います。


ブレーメン」は、ののさん加護ちゃんが後輩に残す最高の置き土産になったと思います。後に続く娘。の5期・6期メンバー、そしてキッズにとって「ブレーメン」はドラマ仕事における一つの目標/壁となるだろうから。
ハードルは高ければ高いほど乗り越えた時に得られるものも大きいモンです。

ののさん加護ちゃんにとっても「ブレーメン」はどこに出しても恥ずかしくない代表作の一つとして、卒業後の活動の大きなアドバンテージとなることでしょう。


ブレーメン」は、いわばモーニング娘。を卒業する辻・加護の卒論みたいなもんですね。
二人の成績?もちろんA+です!